2010年4月12日月曜日

「物質-場」関与の増大の法則

 技術システムの発達は物質-場の関与が増大する方向に進みます。

 技術システムの進化過程において技術システム内の要素は不均等に発達し、特定の段階においてある要素が複雑化します。その要素は対立、技術的および物理的な矛盾を呈して発達(場合によっては複雑化)します。これに対応して物質-場モデルはこの状況を正確に写し出し、物質-場の関与が増大する方向に技術システムが発達することを示します。

●例 スピーカー

 下図はスピーカーの磁気鎖の断面を示したものです:







スピーカーの磁気鎖の断面図

 磁場に置かれた伝導体付きコイルが「エンジン」の役割を果たし、電磁場を拡散体(ディフューザー)の機械的振動、さらには空気振動に変換します。
 磁気鎖における損失を減らして「スピーカー」技術システム全体の効率を上げるためには磁石間の距離を縮める必要があります。すき間が広ければ広いほど損失が増えてしまうわけです。

 したがって、以下のような新たな矛盾が生じます:

「隙間は、
 磁気鎖における損失を減らすためには狭くなければならないが、
 コイルの冷却を改善するためには広くなければならない
 (磁気鎖に空隙が無いのが理想)」

 物質-場分析を用いて以下のように様々な状況を考えることができます:
  • 主要機能実行時の技術システムのモデル
  • 「エンジン」によるエネルギーの主要変換実行時の技術システムのモデル
  • 対立特性1: 隙間におけるエネルギー損失
  • 対立特性2: コイルの冷却
 磁気鎖の空隙における損失の状況を見て、以下の矛盾に注目してみましょう:

「コイルが自由に動けるためには空隙がなくなてはならないが、
 磁気鎖における損失を阻止するためには空隙があってはならない」

 この対立を物質-場で表すと以下のようになります:

S1(磁石) → F(磁場) → S3(空隙) → S2(コイル)

 この矛盾は以下のように説明できます:

「磁石間の隙間は、
 磁気的であるためには連続していなければならないが、
 コイルが動けるためには連続していてはならない」

 上記矛盾は磁気鎖の空隙に新たな物質を導入して物質-場を壊すことにより解決されます:
S1(磁石) → F(磁場) S3(空隙) S2(コイル)

 空隙を液状磁性物質に置き換えることにより以下の物質-場が得られます:

S1(磁石) → F(磁場) → S3(液状磁性物質) → S2(コイル)

                       1 - 磁石
                       2 - コイル枠の機能を実行する複合物
                       3 - コイル
                       4 - 拡散体(ディフューザー)
                       5 - 磁力線
                       6 - 液状磁性物質
          
隙間を液状磁性物質(6)で満たしたスピーカーの磁気鎖の断面図

 磁気液体は磁性体微粒子の懸濁液で、以下の二つの物質の特性を有しています:
  1. 磁性がある
  2. 液体の特性を有する、すなわち、流動性を持つ
 これらの特性があるおかげで、隙間を磁気液体で満たすことにより、エネルギーの損失を減らしながらもコイルが自由に動くことを可能にします。

 この解決策は更にもうひとつ重大な問題を解決します: コイルの冷却問題です

 磁気損失を減らすために隙間を狭くするとコイルの熱を逃がしにくくなります。空気の熱容量は非常に低く、熱伝導性も悪いので、隙間の容積を減らすと、除去する熱量も減ることになってしまうからです。空隙を磁気液体に置き換えることで、熱をコイルから周辺へより効率的に伝えることができます。


 技術システムの発達は物質-場の関与が増大する以下の方向に進みます:
  • 要素(物質と場)の数の増大
  • 要素間のつながりの量の増大
  • 要素間のつながりの感度の増加
  • 新たな要素の導入
  • 技術システムの構造の変化
  このように

「技術システムの発達は物質-場の関与が増大する方向に進む」わけですが、

これを「物質-場」関与の増大の法則 と言います。


Copyright notes

This book has been developed in the frame of the TETRIS project funded by the European Commission—Leonardo da Vinci Programme.
The partners of the project consortium are:
AREA Science Park (Italy) www.area.trieste.it (project coordinator)
ACC Austria Gmbh (Austria) www.the-acc-group.com
European Institute for Energy Research - EIfER (Germany) www.eifer.uni-karlsruhe.de
Fachhochschule Kärnten (Austria) www.fh-kaernten.at
Harry Flosser Studios (Germany) www.harryflosser.com
Higher Technical College Wolfsberg (Austria) www.htl-wolfsberg.at
Jelgava 1. Gymnasium (Latvia) www.1gim.jelgava.lv
Siemens AG, Sector Industry, Industrial Automation and Drive Technology (Germany) w1.siemens.com/entry/cc/en/
STENUM Environmental Consultancy and Research Company Ltd (Austria) www.stenum.at
Technical Institute for Industry “Arturo Malignani” (Italy) www.malignani.ud.it
The educational center for adults of Jelgava (Latvia) www.jrpic.lv
University of Florence (Italy) www.dmti.unifi.it

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