2011年12月15日木曜日

TRIZとは

 TRIZは、旧ソ連海軍の特許審査官であったゲンリッヒ・アルトシュラー(Genrikh Altshuller19261998)が様々な特許を調べるうちに発見した一連の発明法則です。ここでは、TRIZが体系的で、構造化された思考方法の科学であることをご紹介します。

1 TRIZの意味

 TRIZは「トゥリーズ」と読みます。ロシア(旧ソ連)生まれの言葉で、「発明的問題解決理論」という意味のロシア語を英語で表記(発音)した場合の頭文字をとったものです(図1)。ロシア語の頭文字で書くならば“ТРИЗ” となります。それぞれの単語を英語で表現して並べ替えると「Theory of Inventive Problem Solving」となるため、英語でTIPS「ティップス」ということもあります。

 1 TRIZ(発明的問題解決理論)の表記
2 TRIZの誕生
TRIZは、アルトシュラーが様々な特許を調べるうちに一連の法則を発見し、これらの法則を技術問題の解決に役立てようと、実践的な方法論としてその基礎を築いた理論です。彼とその同僚たちが当初約40万件、のちに20数年間費やして250万件ともいわれる膨大な特許をもとに、体系的で、構造化された思考方法の理論を構築したものです。 

3 アルトシュラーの着想

アルトシュラーは、1926年に旧ソ連のタシケントで生まれました。そして、若干14歳のときに最初の発明をしたといわれています。このような子供のころからの才能を活かすべく特許審査官の仕事につき、20歳の頃にはTRIZの理論の基礎を構築したといわれています。
彼は、創造的な革新や応用技術にはその基礎となる汎用的な原理があるのではないかという仮説を立ててTRIZの研究を始めましたそしてこの原理を発見し、体系化に成功すると、さらに発明のプロセスを予測的なものにすることができるのではないかと考えました。つまり、膨大な特許を整理分析した結果から帰納法的に体系化した理論を、現在直面している個々の問題に適用すれば、従来のアプローチでは解決が難しかったような発明的問題を見事に解決できるのではないかと考えたわけです。これは、試行錯誤によって創造的成果を得ようとする従来の方法を改め、一連の法則を手法化し、体系づけてより科学的に創造思考を進めようというもので、いわば革新的な発明を天才のひらめきから汎用的な方法論へとハードルを低くしたといえるでしょう。また、他の問題解決手法のほとんどが方法論だけで展開しているのに対し、TRIZでは汎用的な方法論に加えて膨大な数の特許事例や科学知識を知識データベースとして兼ね備えていることも大きな特長といえます。 

TRIZの歴史と進化

 TRIZの歴史は大きく2つの時代に分けることができます。クラシカルTRIZの時代とコンテンポラリTRIZの時代です。 

4.1 クラシカルTRIZ時代(1946年~1985年)

 1946年、弱冠20歳のG.アルトシュラーは、発明の科学の研究に着手しました。2年間、数多くの特許を本格的に調査した結果、幾つかの発明の法則を見つけ出し、その一連の理論をTRIZと名づけました。その後、弟子達と膨大な特許の調査を更に重ね、TRIZの基礎理論を築きました。 

●この間の主な業績:
・技術進化の8つのパターンの原形
・物質―場分析と76の標準解
40の発明原理、分離の原則他
30冊を超える図書、論文多数 

4.2 コンテンポラリTRIZ時代(1985年~現在)

ソ連崩壊(19851986年はペレストロイカ)後、TRIZ関係者がアメリカに渡り、企業を興したり、コンサルタントとして活躍を始めたりしました。日本を含めた西側諸国への普及、コンピュータとの融合・発展、問題解決の方法としての確立、エンジニアリングとしてTRIZ諸手法の統合化などが進んでいます。 

●この間の主な業績:
・クラシカルTRIZ諸技法の深耕と体系化
・クラシカルTRIZの事業、組織、経営などへの適応
・問題解決の方法としてのシステマティックなアプローチの方法
・各種ソフトウェア
2 コンテンポラリTRIZの代表的な手法、ツールとその推進者

5 TRIZの日本への由来

 アルトシュラーがTRIZ研究の第一線を退いた1985年以降、特にペレストロイカを機に旧ソ連がロシアほか多数の国に分かれてからは、アルトシュラーの弟子たちによって米国をはじめとする西側諸国にTRIZが伝えられました。そして特に米国おいて、コンピュータ技術との融合が進んで飛躍的な発展をとげました。日本には1996年に、米国を経由したものが発明的問題解決理論として紹介されてきました。ここでいう発明的問題とは、技術者が現在持っている技術、知識では解決することが困難な問題で、それが解決できれば特許となるような技術的問題を指しています。

2011年11月24日木曜日

ARIZ(発明問題解決アルゴリズム)の各ステップ

 以下に、発明問題解決アルゴリズムの各ステップを示します:

1     問題モデルの構築と発明標準解の適用(問題分析とモデル構築)
 ステップ 1.1 問題条件の記述
 ステップ 1.2 システムの対立要素の特定
 ステップ 1.3 対立システムの図式の作成
 ステップ 1.4 システムの図式モデルの選択
 ステップ 1.5 主たる対立の強化
 ステップ 1.6 問題モデルの策定
 ステップ 1.7 標準解の探索
2     利用可能な資源の分析
 ステップ 2.1 作用空間の分析
 ステップ 2.2 作用時間の分析
 ステップ 2.3 物質―場資源の分
3     個別資源に関するIFRと物理的矛盾の分析による満足のいく解決アイデアの構築
 ステップ 3.1 理想的最終結果1IFR-1)の策定
 ステップ 3.2 IFR-1定式の強化
 ステップ 3.3 マクロレベルでの物理的矛盾
 ステップ 3.4 マイクロレベルでの物理的矛盾
 ステップ 3.5 理想的最終結果2IFR-2)の策定と初期問題の指定
 ステップ 3.6 標準解システムの利用(76の標準解、物質―場モデルの使用)
4     資源の活用
 ステップ 4.1 「小人」を用いた問題のモデル化
 ステップ 4.2 「IFRから一歩後退」手法の使用
 ステップ 4.3 利用可能な資源の混合物の使用
 ステップ 4.4 利用可能な資源への各種空洞の導入
 ステップ 4.5 利用可能な資源から派生する物質の使用
 ステップ 4.6 物質を電場または電場間作用に置き換えた問題解決の試行
 ステップ 4.7 「場 場に反応する添加物」の対による問題解決の試行
5     TRIZに蓄積された知識集の活用
6     初期問題記述の変更ないしは修正
7     得られた解決策の評価
 ステップ 7.1 解決策の確認
 ステップ 7.2 得られた解決策の予備的評価
 ステップ 7.3 発明が既存特許でないことの確認
 ステップ 7.4 実装に伴って発生する問題の評価
8     適用範囲の拡大と創造的な解決策の標準化
9     解決過程の分析と省察

Copyright notes

This book has been developed in the frame of the TETRIS project funded by the European Commission—Leonardo da Vinci Programme.
The partners of the project consortium are:
AREA Science Park (Italy) www.area.trieste.it (project coordinator)
ACC Austria Gmbh (Austria) www.the-acc-group.com
European Institute for Energy Research - EIfER (Germany) www.eifer.uni-karlsruhe.de
Fachhochschule Kärnten (Austria) www.fh-kaernten.at
Harry Flosser Studios (Germany) www.harryflosser.com
Higher Technical College Wolfsberg (Austria) www.htl-wolfsberg.at
Jelgava 1. Gymnasium (Latvia) www.1gim.jelgava.lv
Siemens AG, Sector Industry, Industrial Automation and Drive Technology (Germany) w1.siemens.com/entry/cc/en/
STENUM Environmental Consultancy and Research Company Ltd (Austria) www.stenum.at
Technical Institute for Industry “Arturo Malignani” (Italy) www.malignani.ud.it
The educational center for adults of Jelgava (Latvia) www.jrpic.lv
University of Florence (Italy) www.dmti.unifi.it

2011年11月23日水曜日

ARIZ-85C(第1~9部)

 ARIZ-85Cは第19部で構成されますので、以下にそれぞれの部について説明します:

1     問題モデルの構築と発明標準解の適用
 ARIZの最初の部分の目的は、解決する問題のモデルを構築することです。第1部の終わりには、初期状況から選んだ問題が技術的矛盾(システムの品質を評価するために用いられる2つのパラメータ(評価パラメータ)間の対立を示す矛盾)として定式化されます。
 このアルゴリズムの第2部に進む前にTRIZの標準解が使えないか確かめてみる必要があります。
 重要なのは、初期問題状況の記述を問題モデルに変換後、問題状況を生ずる最重要な構成要素だけがモデル記述に残ることです。
 結果的に、問題状況記述に対してTRIZで蓄積された発明的標準解を適用できる形を与えやすくなります。

2     利用可能な資源の分析
 ARIZの第2部は、得られた問題モデルを分析してその問題の根底にある矛盾を見出す準備のために設けられています。より正確に言うと、この部分は問題解決に使えるかも知れない資源(特に、空間、時間、物質および の資源)を分析するために設けられています。
 ARIZの第1部と同様、第2部には心理的惰性を抑止するための作用が含まれています。

3     個別資源に関するIFRと物理的矛盾の分析による満足のいく解決アイデアの構築
 ARIZは、問題の根源を浮き彫りにし、個別の問題状況において得られる資源を用いてそれらを取り除くように作られています。このアルゴリズムの第3部では、望ましい結果とその実現を阻む矛盾に関する記述が引き続き行われます。
 ARIZの第3部の最初の目的は、第1部で得られた問題モデルを詳細化することです。この目的は、アルゴリズムの第2部で行ったモデル分析により得られた追加情報を用いて実施されます。この新しい詳細モデルは種々の規則に基づいて構築され、第1部で作られたモデルとは根本的に異なります。
 この部分では、どの結果が問題に対する解決策と見なされうるか判断し、使用可能な資源を用いて望ましい結果を得ることを阻止している数々の矛盾を認識する必要があります。
 この部分の二つ目の目的は、問題全体に対する概念解の組み立てに用いる部分解を得ることです。得られた部分解を統合し、最も望まれる結果に最大限に近づく一つの解決策システムを提供します。

4     資源の活用
 ARIZの第4部は、利用可能な資源が問題解決にどのようにして活用できるかを理解し、既に見出した解決策の効果を向上させるためにあります。
 4部には、システム進化理論の観点から、より進んでいると考えられるものを得ることを目的とした一連のオペレーターが含まれています。
 解決策の中に気に入ったものがあれば、ARIZの第7部へ飛んでARIZの規則に従って解決策を予備的評価することができますが、満足できるものが見いだせなかった場合には、このアルゴリズムの第5部に進むことになります。

5     TRIZに蓄積された知識集の活用
 5部において、問題解決者は、標準的な解決方法を様々な形で記述する種々のTRIZツール(標準解のシステム、物理的矛盾の解決原理、イフェクツ)を参照します。
 これらのデータベースを利用しても満足できる解決策が得られない場合には、ARIZの第6部へ進む必要があります。

6     初期問題記述の変更ないしは修正
 このアルゴリズムの第6部では、ARIZの第1部から分析をやり直すのに先立ち、問題の定義またはモデルを変更あるいは修正するための提案がなされます。

7     得られた解決策の評価
 ARIZの第7部では、TRIZの観点から解決策を評価し、得られた解決策を強化します。
 でも、これは予備的評価に過ぎず、この評価の過程で、得られた解決策を詳細化したり改善したりする新たなアイデアが生まれる可能性があります。
 ARIZによる問題解決が専門家の固定観念を克服して問題解決者をその専門的能力外に引き出すこともあり、このような場合には、得られた解決策の評価を各分野の専門家に委ねる必要があります。
 解決策が受け入れられたならば、特許申請の可能性について弁理士の方に相談してみると良いでしょう。

8     適用範囲の拡大と創造的な解決策の標準化
 ARIZの第8部では、最終的な解決策の実装の準備をし、この解決策が様々な領域を含む他の問題を解決するのにも使えないか調べてみます。
 これにより、更なる実用化へ向けた、より汎用的な標準形を解決策に与えることができます。
 この部分はまた、解決策に対してより優れた特許権保護を持たせる(特許傘の構築)ためにも必要です。
 さらに、この部分により、解決策の効果を高めてその実装により余得を引き出すことができます。

9     解決過程の分析と省察
 ARIZの第9部では、行った作業の核心の理解を深めます。この部分の目的は、問題解決の分野においてできる限り多くのことを学ぶことにより、個人やチームの創造力を伸ばすことです。
 この部分はまた、行っている作業について省察する能力を養うためにもあります。
 原則として、ARIZの各ステップ完了時には、その遂行内容、遂行中に直面した困難、克服した困難、ARIZ提案の履行精度、遂行内容とARIZ提案内容との差異の有無および差異が生じた原因に関して省察すべきです。
 これらの問いに対する回答により省察能力が養われ、トレーニング用問題を通じてこのアルゴリズムを消化吸収しようとする際、ARIZに基づく問題解決プロセスが理解しやすくなります。実際の問題に対するARIZの専門的な適用の際には、これらによりARIZ自体を更に進化させ、新たに出現する一段と複雑な問題を解決するための有効性が高められやすくなります。
 TRIZに限らず、省察能力が最も重要な一般的思考能力のひとつであることには注目すべきであり、ARIZの第9部はこの基本的な思考能力を養う手助けをしてくれます。

Copyright notes

This book has been developed in the frame of the TETRIS project funded by the European Commission—Leonardo da Vinci Programme.
The partners of the project consortium are:
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Jelgava 1. Gymnasium (Latvia) www.1gim.jelgava.lv
Siemens AG, Sector Industry, Industrial Automation and Drive Technology (Germany) w1.siemens.com/entry/cc/en/
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