2010年1月29日金曜日

「第1回イスラエルTRIZコンファレンス」の概要[2/5]

TRIZ 理論および手法 - さまざまな科学分野からの講演:

「工業数学と体系的発明思考法」
Adir Pridor, Ph.D. Industrial Mathematics LTD 社長兼CEO

 工業数学のかなめは実際の環境を適切に表わす数理モデルを作ることであり、これにより新たな解決策や見識に対する必要性を提示することができます。この抽象化作業は体系的発明思考法(Systematic Inventive Thinking - SIT)と共通の特筆すべき特徴をいくつか持っています。数理モデルのこのような側面について、実際の適用例から、生産計画、デイケア管理、交通整理などいくつかの事例を取り上げて説明します。

「発明的な思考: 誰がいつ行うか」
Shulamith Kreitler教授, テル・アビブ大学 心理学科

 この講演は、発明的な思考をする傾向のある人と、どちらかといえば創造的な思考をする傾向のある人の認知的および人格的な特性を識別することに焦点を合てたものです。認知的な特性は意味理論(Theory of Meaning, Kreitler & Kreitlerが構築)の観点から調査し、動機付け過程は認知定位理論(Cognitive Orientation Theory, Kreitler & Kreitlerが構築)の観点から調査しました。創造的な思考が個人の主観的な意味と個人間で共有される意味それぞれの根拠をなす行為に対してバランスをとって注視するという特徴があるのに対し、発明的な思考は個人間で共有される意味の特性を示す行為に大部分頼っていることが明らかになりました。また、創造的な思考が動機的には主に、社会全体への貢献によって補完される心の内と要求への働きかけに頼っているのに対し、発明的な思考はむしろ、外界や自分の環境における実需に焦点を合わせた、より機能指向的な動機付けに頼っています。重要な結論としては、発明的な思考と創造的な思考はそれぞれが関与する認知過程においてもそれぞれの根底にある動機付けについても異なるけれども、いずれの思考型も必要であり、焦点を絞って介入することにより両者を推進できそうだということが挙げられます。

「生物模倣技術とTRIZ」
Dr. Sara Greenberg, Holon工科大学 工学部

 形状、大きさ、音、色や反応などは、カムフラージュ、警告、誘引や生存などの生体機能の遂行に用いられる自然のパラメーターのごく一部に過ぎません。
 現存する自然の現象や効果を問題解決やシステム開発の手助けとして利用することは TRIZの基本的な考えのひとつです。生物模倣はこのような手助けのひとつとしてあげられます。生物模倣は数多くの自然の解決策のひとつであり、工学、建築、医学、バイオテクノロジーや航空など様々な技術分野においていくつもの問題に対する解決策の原型として用いられてきました。技術者は、生物模倣による解決策から、システムパラメーター調和の法則(「あらゆる効果的な技術システムの存在に必要な条件は、それが関与するパラメーター間の調和である」)を身近にそして効果的に理解できます。
「失敗の原因としての組織のビジョンと目標、そしてそれをTRIZで克服する方法」
Ido Lapidot, Intel Systematic Innovation, TRIZリーダー

 大多数の組織はその独自の文化を築きがちです。この文化が組織の一部である個人やチームの行動に影響を及ぼし、思考のパターンやパラダイムをそのうち作り上げます。これらのパラダイムのせいで、組織が可能性ある他の選択肢に気付かずに何度も同様の決定を繰り返すようになってしまうと問題が生じます。やがて、組織はそれが有する資産、製品およびサービスを活用した最大限の可能性を発揮できない危険にさらされて無駄を生じ、競争相手に機会を与えてしまうことになります。
 標準的な経営ビジョンのピラミッドへTRIZの概念を組み入れることにより、組織がその "正しい" ビジョンとミッションを見つけるのを手助けできます。
 相反する二つの次元を用いて組織の目標や指針を策定することにより、心理的惰性という形で現れる "致命的問題" を回避して組織の価値を上げ続けられるのに対し、一次元的な目標設定ではひとつの主要領域にだけ注視してしまい、やがて、組織価値を低下させてしまう危険性をはらんでいます。

「脊椎圧迫骨折治療用の新たな骨セメントの開発」
Ronen Shavit, 研究開発エンジニア, NMB

 脊椎圧迫骨折用の一般的な治療法を椎体形成術と言いますが、これはポリメチル・メタクリレート(polymethylmethacrylate - PMMA)、骨セメント、造影剤の混合物を蛍光透視法により椎体内へ注入することにより行います。米国で開発された別の治療法である亀背形成術(Kyphoplasty)では空気注入式の骨栓(bone tamp)を圧搾された椎体内へ挿入し、圧搾された椎骨を持ち上げます。バルーンの膨張により空洞ができるので、それをPMMAベースの骨セメント混合物で満たします。これらの治療法に共通する主な不都合は、PMMA骨セメントが漏れ出てしまうことです。高粘度の骨セメントは、椎体形成術による治療全体を通じて高粘度を保てるという理由によりその使用が提案されました。高粘度の骨セメントを使うもう一つの利点は、治療時間が短縮できるため、外科医が一度の手術で複数の椎骨を治療できるということです。

0 件のコメント:

コメントを投稿