韓国における企業の革新にかかわる活動の歴史を調べてみると、大きく3つの時代があることが分かります。
1980年代には、TPM, TQM(Total Quality Management)のような品質活動が約10年以上活発に、そしてその後、シックスシグマ活動が約10年以上強力に推し進められてきました。
2006年からは、サムスンを先頭にして創造性に関する革新活動が大きな流れとなっており、今でもこれが推し進められています。
言うまでもなく、創造性に関する革新活動において、TRIZが最も大きな役割を果たしています。
企業の一般社員は、このような革新活動を形式的に受け入れ、一種の流行としてとらえがちです。
例えば、
「TQM活動が弱まったらシックスシグマが新たに出て来たんだよね。シックスシグマが廃れると今度はどんな流行を持ち出してきて社員を苦しめるつもりなのかな?」
などのように考えられがちです。
しかし、革新活動は、その国や社会の産業とともに発展し、そのトレンドを形成してゆきます。
ほとんどの製品やサービスにおいて、重要なものは、反比例曲線に近い形を描いています。
例えば、縦軸を「耐久性」とすると、横軸として「組み立て性」が考えられます。
あるいは、縦軸を「コスト削減」とすると、横軸として「品質」が考えられます。
このような反比例曲線が描かれる場合、もし、朝夕の生産、春秋の生産、あるいは東京と大阪の支店におけるサービス対応が異なるのであれば、そのような状況で品質自体を論じることができません。
このような状況下においてさえも生産条件を安定化させるのが安定設計です。
それでは、安定設計によって品質が安定したあとはどうすればよいのでしょうか?
安定した品質を最適な特性のところに移さなければなりません。 これを行うのが、シックスシグマで代表される最適設計です。
初期のシックスシグマでは、最高の特性を示す条件を見つけ出すために、主に実験計画法という方法論を用いていました。
更に一歩進んで、生産現場では制御できない因子、即ち、ノイズがあっても最適な特性を示す条件を見つけ出すというのが田口メソッドで代表されるロバスト設計であり、最適化の頂点であると考えられます。
このような最適な生産条件に至るまでには、通常、しっかりとした職人気質が要求されますが、韓国のエンジニアは、このような最適条件の方法論を活用することにより、短期間で品質を世界的レベルにまで引き上げることに成功しました。
多分、世界中でシックスシグマを最も活発に推進した国が韓国であると言っても間違いないでしょう。
日本でシックスシグマが活発に推進されなかったのは、多くの産業分野において既に徹底した職人気質による最適化が行われていたせいだと思われます。
このようにして最適化が行われたら、次はどうすればよいのでしょうか?
新たなアイデアで新たなシステムを創り出すべきです
つまり、新たな図式を描くべきです。
これを行うのがTRIZです。
韓国では、シックスシグマ活動が衰退期に入るとともに、TRIZが本格的に活用され始めました。
ただし、ここで一つ言っておくべきことは、既存の品質方法論のせいで新たな方法論が排斥されてはいけないのと同様に、新たな方法論のせいで従来の方法論が無視されてしまうようなことがあってもいけないということです。
いくらTRIZが効果的であって新しいアイデアを出せるとしても、TQMやシックスシグマ活動が依然として重要であることには変わりありません。 なぜならば、新しいアイデアが出るということは、生産条件に変化が生じるということであり、その結果、必ずTPMやTQMが必要となるからです。
TRIZで新しいアイデアが出たら、これは必ず最適化の過程も経るべきなのです。
このようにして様々な方法論が時間とともに台頭しますが、これは産業の発展による特徴を反映した必然的な結果です。
最適化、即ち、生産性のみに注目して過去の方法論を無視した結果として安定設計にミスが生じるようなことがあれば、品質に問題が発生して多大な損失をこうむることになってしまいます。
このような方法論の変化を更に他の観点から調べてみるために、以下ではSカーブを利用して説明します。
全ての製品は、それなりの発展方向、即ち、Sカーブを有しています。 その製品が有する最適な品質を最短の時間で見つけ出すのがモトローラのシックスシグマでした。
GEがこのモトローラのシックスシグマを自社製品に適用してみたところ、シックスシグマ品質に到達していない製品が存在することが判明しました。
GEでは、すでに製品設計時点でシックスシグマ品質に到達することができない宿命であったとしてこの原因をとらえ、顧客のニーズ(Critical to Quality, CTQ)を徹底的に反映させ、シックスシグマ品質に到達すべく製品を設計し直したのです。
これがDFSS(Design for Six Sigma)です。
サムスンではGEのシックスシグマを取り入れ、これを更にもう一段発展させました。
従来のフラットホームではもうそれ以上進めることができなくなった時には、新たなSカーブを形成してそこへジャンプする必要があります。
そのために、サムスンではTR(Technology Roadmap)、TT(Technology Tree)とともにTRIZを革新的な方法論として取り入れることになったのです。
(TRは米国のスタンフォードTTは日本、TRIZはロシアで受け入れられています)
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