では、技術的矛盾を解決した2万件の特許はどのような意味を持つのでしょうか?
その答えは以下の通りです: 技術的矛盾を解決したように見える人は物理的矛盾まで見出すことができなかったのです。
その人は何故、物理的矛盾に到達することができなかったのでしょうか?
神ではなかったからです。
エンジニアリングの領域で神の立場に立つことができなかったからです。
その結果、自然の因果関係を把握することが容易ではなかったため、問題の核心である物理的矛盾にまでは到達できなかったのです。
問題自体に対する経験や知識が足りず、充分な分析を行うことができず、問題を把握することができなかったのです。
ただ単に、相反する要求や機能を列挙しただけなのでした。
問題の原因を把握することができなかったため、あれこれ方法を使ってみているうちに問題が自然に解決されてしまったということです。
ちょうど、赤ん坊が泣いている時に、その原因が分からず、お菓子を与えたり、おんぶしたり、おむつを替えたりしてみているうちに泣きやんでしまったのと同じような状況です。
赤ん坊が泣いていた真の理由を知らなかったのです。
ただ単に、「赤ん坊をなだめられない」、「演奏会では静かにしていなければならない」、という2つの事象が対立していることを明確に認知していただけなのです。
しかし、ビジネス分野では状況が異なります。
仮に、政治、外交、経済、購買、総務など、技術的ではないあらゆる分野をビジネス分野であるとします。
このようなビジネス分野では人間が主役となります。
従って、ある社会現象が発生すると、何故そのような状況が発生したのか、色々と工夫しながらその因果関係を推理し、どのような因果関係により、次にどのような事象が発生が発生するのかを容易に予測することができます。
自然現象やエンジニアリング分野に比べて容易であるということです。
人間は、人間をよく理解できます。
眼差しを見ただけで、どのような因果関係、あるいは、どのような力関係があるのかを読み取ることができます。
従って、相対的な観点から見ると、神のような立場にあるのがビジネス分野であると言えます。
でも、エンジニアリング分野は違います。
例えば、プロジェクターの寿命を延ばすという課題があったとすると、プロジェクター内の熱がどこで発生し、どのようにして放出されるのかを知っていなければなりません。
プロジェクターを一生懸命眺めるだけでこのようなメカニズムを知ることができるのでしょうか。
人間が自然を相手にコミュニケーションするためには数学が必要となります。
流体力学や機械工学の数学知識でモデルを構築した上で実験し、研究することによってのみ充分に因果関係を把握することができます。
この点が、エンジニアリングTRIZとビジネスTRIZの最大の違いです。
ビジネスTRIZでは、問題の分析が遥かに容易であるということです。
物理的矛盾を見つけ出すまでの過程がとても容易なのです。
ARIZは、エンジニアリング分野において、技術的矛盾から物理的矛盾を見つけてゆく過程です。
ARIZの Part 1.1 は技術的矛盾の説明であり、Part 3.4 は物理的矛盾を見つけ出すための核心的部分です。
ここまで、Classical TRIZ と PTCモデリングの理論が対立しないことを説明してきました。
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