この問題を解決した人の同僚は、発表会場の裏で眉を顰めています。
何故なら、それが真実ではないからです。
発表者は、実際にはそのような形で作業していませんでした。
同僚はそれを隣で見ていたので、眉を顰めて独り言を発するのです。
「あれはペーパーワークだ」
そうなんです。 一般的に、ほとんどの状況で、それはペーパーワークなのです。
多数のグローバル企業であげられたTRIZによる大きな成果は、このようなペーパーワークによる場合が多いのです。
実際には、以下のような状況が繰り広げられていたのです:
まず、TRIZの教育を受け、その理論の斬新さに惹かれます。
多分、
「TRIZほど強く惹きつける理論は多くはないだろう」
と思うようになります。 そこで、自分の問題にもTRIZを適用してみます。
あるいは、TRIZを適用すべき状況が訪れます。
最初に問題の背景をまとめた上で、まず矛盾を見つけ出そうとします。
TRIZとは、矛盾を導き出して方法論を適用し、矛盾を解決するものであると学んだからです。
ところが、以前、「物理的矛盾が問題を定義する」と言いましたが、実は、問題を定義することが最も難しいのです。
それほど大事なものがそう易々と導き出せるはずがありません。
アインシュタインは、
「問題を定義するなら、まず問題を解きなさい」
と言いました。 TRIZを適用してみようと取り組み始めたエンジニアに、物理的矛盾はなかなか見えてきません。
そして、技術的矛盾はあまりにも多く存在します。
そのため、どの技術的矛盾を選択したら良いのか確信を持つことができません。
あまりにも多い技術的矛盾、そして、見えない物理的矛盾。
これが実際の状況なのです。
従って、大多数の方々は、学ぶ時点ではすぐに理解できるものの、実際の適用は難しいという理由でTRIZの本を閉じてしまいます。
恐らく、矛盾を見つけ出すことが難しいからでしょう。
多くの人が諦めてしまう中で、一部の人は
「何が矛盾であるかは分からないけれど、発明原理と分離の原理だけでも使ってみよう」
という思いでTRIZを適用してみることになります。
そうすると、実に良い結果が導き出されます。
数多くの現場で感じたことですが、矛盾はさておき、分離の原理や40の発明原理を適用するだけでも相当の成果を導き出すことができることを確信しています。
さて、このようにして良い結果が得られると、企業ではこれを発表させようとします。
社長を前にした発表となるため、10枚程のパワーポイントスライドを用意しなければなりません。
そこで、彼は物語を作り始めます。
学んだものはTRIZだから、TRIZに合わせて物語を作るのです。
即ち、
「何故14番の発明原理が適用されたのだろう」
と悩んでいるうちに、「そうだ、TRIZ理論に合わせてみたら、これとあれとの間に技術的矛盾をがあるからだ。矛盾マトリックスともピッタリだ。」
と言いながら物語を進めます。
ここに及んで、矛盾を見つけ出したのです。
これによって矛盾を確信し、10枚のパワーポイントスライド作成のために理論を展開していくうちに、更に良いアイデアまで導き出されるようになります。
結局、最終的には、
「このようにして矛盾を見いだし、方法論を適用し、発明原理を利用してアイデアを導き出し、問題を解決しました」
と発表することになります。
こうして物語を作り上げて発表するため、隣で見ていた同僚から「ペーパーワークだ」と指摘されるようになるのです。
これが、現場で実際によく見られる光景です。
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