“大理石の中に天使が見えたので、彼が自由の身となるまで彫り続けた” ― ミケランジェロ
10.1. はじめに
「朝でした。昇りかけた太陽が穏やかな海の小波と交り、金色に輝いていました。」
このような出だしでリチャード・バック(Richard Bach)は、創造的な生き物であるかもめのジョナサン(Jonathan Livingston Seagull)について記した彼の素敵な物語を書き始めています。Genrich Altshullerと私にとって、この物語は私たちのお気に入りとなりました。
この本に関する遍歴はちょっと変わっています。カリフォルニア州のベルモント岸に住んでいた1959年にリチャード・バックが岸近くを歩いていると、「かもめのジョナサン」と言う声が聞こえてきました。これに続いて彼は、明け方に単独飛行するかもめの白昼夢のようなものを見ました。バックは、自分の胸を一杯にしてしまったこの物語を著さなければならないと感じ、かもめのジョナサンの第一部となる「群れからの追放」までを書きおろしました。ところが、聞こえてきた声は、聞こえ始めたのと同じくらい急激に聞こえなくなってしまいました。バックは8年後、そこから1,500マイルも離れたアイオワにおいて、同じような形で話の続きを夢で見ました。
リチャード・バックは、読者やファンの手紙に返信する過程で、この作品においては彼の他の作品とは違い、既に著した内容以上のことを何一つ書き足せないことに気付きました。“かもめ” の着想は彼のものではなかったのでした。この作品を記している間、彼は作者というよりも一種の媒体のような役割を果たしていたのでした。
私は、TRIZの研修プログラムを充実させるために、バックによるかもめのジョナサン物語に基づいた創造的人物育成(Creative Person Development (CPD))講座を開発しようと長年構想していました。この物語は多くの言語に翻訳された人気あるもので、ジョナサンの生涯における節目を容易にたどれるようになっています。
私が2009年に初めて用意したCPD講座について以下の3節で説明します。3部(1. 創造的人物の形成 2. 天に向かって高く、完璧を目指して 3. 教師たれ)に渡る計49ステップで構成されています。各ステップにおいては、この物語の該当箇所の引用または概要とそれに対するコメント、創造的人物との関係、そして創造的人物の関連する特徴について示してあります。
原文出典: http://www.triz.com.tw/isak/preview.pdf
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